フリーランスが価格設定する時に気を付けるポイント

昨日(2019/7/16)放送のボンビーガールを見ていて気になったので、フリーランスの方が自分の作品の価格を決める時の注意点を記載しました。

幸せ!ボンビーガール
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放送概要

特集されていたのは油絵を5,000円で作成受託している女性。

以前にも出演しており、出演によって依頼が大量に舞い込んだとのことです。

しかしながら油絵を5,000円。(サイズにもよるみたいですが)

どれだけ頑張っても月に30枚しか描けないとのことです。

「油絵画家の価値を下げる」といった意見もあったようですが、ここでは「価格の妥当性」に絞って進めます。

「限界収益」を考えてみる

30枚作っても5,000円/枚だとすると150,000円/月。

年間では180万円の収入にしかなりません。おそらく1枚/日で考えて言ったと思うので土日も無休です。それで年収180万円とはそこらのブラック企業よりひどい話です。

「収益」=「利益」ではない

仕事に使う費用として油絵の道具代もかかるわけで、所得(利益)は当然もっと下がります。

さらに税金もかかります。油絵道具代の相場がわからないので年収=年所得として計算すると、180万円の所得でも約10万円は所得税が課せられます。

おまけに住民税や国保、国民年金もかかってくるので休みなく働いても手取りが月々10万程度、ということになってしまいます。

ここから家賃等々生活費を支払うわけですが、どう考えても厳しいですよね。(自宅をアトリエとして経費計上している可能性はありますが)

年間の標準制作可能作品数を決める

まず作品制作に係る時間を考える

油絵などの制作もそうですが、我々のようなコンサルでも準備にかける時間やお客様と打ち合わせする時間などがあるわけです。それを踏まえて1つの仕事の完了までに費やす時間が何時間くらいか考えてみましょう。

ここでは仮に「10時間かかる作品」を前提として進めます。

年間で最大いくつの作品を作れるか

1日8時間労働だとすると8時間×20日=160時間/月≒2,000時間/年くらいが年間の目安です。

そのまま計算すると10時間かかる作品なら2,000÷10=200作品くらい作れるという話になりますが、ちょうど隙間無く仕事が舞い込み続けることもそうそうありませんので、この8割くらいを最大制作数の目安に思っておきましょう。

そうすると10時間かかる作品なら年間に約160作品程度が最大制作数となるでしょうか。

標準制作可能作品数を設定する

さきほどの160作品は「最大ライン」です。これを基準に価格設定すると、ぎりぎりまで仕事を取ってやっと普通に食いつなげるという話になってしまいます。

10時間なら2営業日はかかるので、週に2作品≒月に8作品≒年に100作品くらいを通常ラインとしてみます。

週に20時間労働って少なくない?と思うかもしれませんが、フリーランスであれば経理業務や広報業務も自分でこなさないといけませんし、必要に応じてセミナーや勉強会へ参加したりもするので「思っているほど制作に費やす時間は取れない」前提で価格は考えた方が良いです。

価格を決める

通常ラインの制作数から価格を逆算

先ほど「通常稼働での制作数」を100としたので、価格は「年間の目標売上」÷100で求められます。

年間の目標売上を決める

給与と同じ感覚で決めるのは危険

年間の目標売上の決め方は個人個人の想いによってそれぞれですが、「普通のサラリーマン・OLくらいの収入があればOK」と思っている場合注意が必要です。

給与所得者の平均給与額は約430万円(平成29年分民間給与実態統計調査より)ですが、だからといって「年間430万円くらい収入があればいいから、430÷100≒4.3万円/作品くらいでいいかな」とか思うと痛い目に遭います。

給与所得者には「給与所得控除」というものがあるので、430万円の年収があっても課税の対象になる収入は290万円くらいです。一方でフリーランスは収入から必要になった経費を差し引いた額(所得)にそのまま課税されます。

もし経費がほとんどかからない場合、430万円の売上にそのまま課税されてしまうわけです。課税所得が430万円と290万円だった場合、所得税にして25万円※くらい差が出ます。その他住民税等にも差が出るため、430万円売り上げたからといって平均的な給与所得者と同じ生活水準になるとは限らないのです。

※扶養家族等がいない前提での概算

経費も含めて考える

仮に先ほどと同様に「給与所得者の平均くらい」を想定売上とするなら、「売上」-「経費」=500万円くらいを設定しておくと良いかなと思います。ただ、配偶者や子供の有無等によっても変わってくるので、本来は専門家に相談するなどして決めた方が良いです。

ここではアトリエや事務所などの固定費を無視して500万円の売上を目標に置きますが、そうすると価格設定は500万円/年÷100作品/年=5万円/作品となります。作品ごとに係る経費(絵画なら額縁代など)があるなら5万円+経費とします。

最大ラインである160作品を制作した場合、5万円/作品×160作品=800万円になるので、おおよそ500万円~800万円くらいの年収幅になります。

目安を持つことが大事

色々と書きましたが、この通りに設定することが価格設定の全てではありません

制作スピードが明らかに遅いのであればもう少し安くして、価格に見合った制作スピードを身に着ける努力をすべきでしょうし、需要が安定して見込めるのであればもう少し強気の価格設定でも良いと思います。

このくらいの価格で自分の生活は成り立つのか」といった判断基準の一助となればと思います。

経営アドバイス
この記事を書いた人

中小企業診断士として、様々な業種・事業規模の経営者の方をご支援しています。
「管理会計」と呼ばれる、未来を予測し、企業運営の物差しとなる目標を作る会計を専門にしています。
経営コラムでも管理会計の話を中心に、経営者に知っておいていただきたいことを身近な例を交えて紹介出来るように努めています。

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合同会社スタンド・マネジメント
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