事業計画を作れない勇者にりゅうおうは倒せない

さて今回は「計画を作ることの重要性」をドラゴンクエストの力を借りて解説したいと思います。

多々強引な解釈が入りますが予めご了承ください。

ドラゴンクエストとは

今更説明も不要ですが、エニックス(現スクウェア・エニックス)から発売された国民的RPG(ロールプレイングゲーム)です。

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今回は初代を扱いますが、初代ではラダトームの王様に頼まれローラ姫を救出、さらに世界を我が物にしようとするりゅうおう(竜王)を倒しにいくというのがおおまかなストーリーです。

事業計画とは

ざっくりと言うと、「自社の中長期の目標を達成するための計画」です。

収支計画や予算と同じものと考える方もいらっしゃいますが、収支のみならず「どのような活動を行うか」といった行動計画等も含み、必ずしも数字を必要とするものではありません。

事業計画を策定する目的

これも「銀行から融資を受けるため」と考える経営者がおられますが、その目的はあくまで付随的なものです。

本来は「中長期の目標を達成するために短期・中期でどのような取り組みをやっていくか」を明確にすることが目的だと私は考えます。

明確にすることで経営者自身の意識付けになることはもちろん、従業員との意識合わせにもなります。特に従業員を抱えるような企業であれば「会社」として目指す方向も大事になってきますので、各々が同じゴールを見て行動するよう、方向性を提示する必要があります。

勇者の事業計画

さて本題です。勇者はどのような計画を以て冒険に挑むのでしょうか。ドラクエをプレイしていた時の気持ちを思い出しつつ読んでいただければ幸いです。

初代の勇者は最初から最後まで1人で戦いますが個人事業主なんでしょうか

長期目標を立てる

まず「将来どうなりたいか」を考えます。長期目標は数値で表す必要は無く、「こうなったらいいな」「こういうことをやりたい」といった経営者の「想い」を打ち出していくことが望ましいと思います。

勇者であれば「世界に平和を取り戻す」ことが目標でしょうか。ここから逆算して行動計画を考えていきます。

経営者は誰しも持っているもの

何らかの目的を持って起業されていると思いますので、実はみなさま長期計画は持っているものなのです。「計画」と聞くと少し尻込みしてしまうかもしれませんが、要は「どうなりたいか」です。

より多くのお客様にサービスを利用してもらいたい、支店を増やしたい、従業員が笑顔で働ける環境を作りたい・・・。それに向けて何をしていくか具体化することが大切です。

マイルストーンを作る

例えば10年後※1に世界に平和を取り戻す目標を立てたとしましょう。

※1実際はゲーム内世界でもオープニングからエンディングまで10年も経過していないと思いますが、あまり短くすると中長期感がなくなるのでご勘弁下さい

そうすると、復興作業も考慮して8年後には竜王を倒さないと間に合わないかもしれません。さらに、その前にドラゴンを倒しローラ姫を救出※2しておく必要もありますし、竜王の城へ行く方法も見つけ出す必要があります。

※2ローラ姫は助けなくともクリア可能です

こういった、目標の達成のために「いついつまでに何をする」といった計画を立てることを「マイルストーンを作る」などと言います。

短期・中期目標を立てる

さて、長期の目標は明確になったものの、王様から120ゴールドとたいまつを渡されたばかりの勇者に竜王を倒すイメージなど持てません。そもそもスタート地点のラダトーム城と竜王の城とは地続きでないので行き方すらわかりません。

なのでまずは中期目標としてローラ姫を救出することを考えてみます。ちなみに長期は10年前後、中期は3~5年、短期は1~2年(もしくは1年)を指すことが多いです。

中期目標の達成のためにはローラ姫を見張っているドラゴンを倒す必要がありますので、レベルを上げて装備を揃える必要があります。

短期・中期の計画には数字を交えていく

ドラゴンを倒すとなるとレベルを10くらいまで上げつつ、はがねの剣とはがねの鎧あたりを買い揃えることも目標となるでしょうか。

こうして、「竜王を倒す」という雲をつかむような目標からだんだん近くの目標が具体化されていきます。

但し「レベル10」「剣と鎧を買う」だけでは途中経過が順調かどうかよくわからなくなります。レベルを10まで上げるには2,000の経験値、はがねの剣・鎧を買うには4,500ゴールドが必要になるため、経験値とゴールド※3の量を指標として管理します。

これをKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)と呼びます。

※3 経営の短期・中期計画は目標が利益≒ゴールドになるので、ここで言うゴールドは本来KPIとは呼びません

数字を達成するための行動計画を考える

数字の計画だけ作っても仕方ありません。KPIを設定したら、今度はその達成を目指した行動を考えていくことになります。

2,000の経験値はラダトームの周りにいるスライム(経験値1)を2,000匹倒して回れば得られますが、どう考えても非効率なので、おおさそり(経験値16)やリカント(経験値40)も倒したいし、ドラクエ定番のメタルスライム(経験値775)も倒していきたいところです。

しかしながら王様から120ゴールドとたいまつを渡されたばかりの勇者(2回目)がいきなりリカントに殴りかかっても一撃で沈みます。というかリカントが出てくるリムルダールの街近辺までたどり着けません。

そうするとひとまずはラダトームの城付近にいるスライムやドラキーと問題無く渡り合える程度になるまで鍛えようかと思い、ラダトームの街に売っている布の服やら皮の盾を買うためのゴールドも集めようと考えます。

かなり具体的になってきました。この直近の計画を短期計画や単年計画などと言います。

収支計画を用意する

ドラクエでそこまでするかという話はさておいて、行動を起こすにも費用は必要です。

先ほどの例でいえばドラゴンと戦う前に2,000ゴールド集めることを目標としましたが、途中で布の服や皮の盾を買うためにゴールドを消費するため、2,000ゴールドだけ集めても足りません。回復のためにやくそう(薬草)を買うこともあるでしょうし、宿屋に泊まることもあります。

こういった費用も考慮した上で、利益目標を達成するにはいくら売上※4が必要かを考えないといけません。

※4 ゴールドを得る手段が基本的にモンスターを倒すか宝箱から得るかなので「売上」と呼ぶのも違和感ですが

損益計算書の計画を作る

このくらいの活動になるでしょうか。数字は適当なのでドラクエのプレイには活かせないと思います汗

売上合計7,000
モンスターから入手5,400
装備売却1,600
費用合計5,000
装備購入3,500
薬草・キメラの翼等購入1,300
宿泊費等200
利益2,000

こうしてみるとやるべきことがだんだんと明確になっていくと思います。

計画は必要に応じ見直していく

上の損益計画にしても、実際は途中で宝箱からゴールドを拾うこともあれば、思ったよりキメラの翼を使ってゴールドが減ったなんてこともあるでしょう。

レベルも適当に10を目標としましたが、もしかしたら足りないかもしれません。

計画を作った段階では見通せなかったことが後になって出てくるのはよくあります。計画と実績の差分を見て、なぜ差が出来たか、目標達成のために行動を見直すべきか、といったことを考え、必要に応じ計画自体の見直しを行います。

短期計画は半年ごと、中期計画は1年ごとに見直すことが多いでしょうか。会社によってはもっと短いスパンで見直しを行っていることもあります。

ただ、長期の計画はあまり見直さないことが多いです。足元の変化で10年後の目標が達成出来なくなるようなことはそうそうないためです。ドラゴンが思いのほか強かったからといって「竜王を倒す」目標を見直すことが無いのと同じ(?)です。

計画を立てずに挑むのは危険

では何も考えずに冒険に出るとどうなるでしょうか。

適当にやくそうを買っておけばスライムやスライムベスくらいは倒せるかもしれませんがおおさそりあたりに倒される気がします。

ドラクエでは全滅すると所持金が半分になってラダトームの城に戻るわけですが、なぜ倒されたかも考えずに再び挑むと当然また倒されます。※5

※5 全滅しても経験値はそのままなのでそのうち倒せる可能性はありますが

ドラクエでは王様に「おぉゆうしゃよ!しんでしまうとはなさけない!」と罵倒されるだけで済みますが、現実ではそうもいきません。全滅してしまわないよう、先に計画を立てておくことが大事なのです。

経営アドバイス
この記事を書いた人

中小企業診断士として、様々な業種・事業規模の経営者の方をご支援しています。
「管理会計」と呼ばれる、未来を予測し、企業運営の物差しとなる目標を作る会計を専門にしています。
経営コラムでも管理会計の話を中心に、経営者に知っておいていただきたいことを身近な例を交えて紹介出来るように努めています。

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